松岡 直哉 / Matsuoka Naoya
総支配人
正直に言えば、入社した頃の私には「文化を紡ぐ」という高尚な目的意識があったわけではありません。「スキルはないけれど、現場を走り回るポジションなら自分も輝けるかもしれない」。そんな、ある種のがむしゃらなスタートでした。
当時は今以上に仕事に没頭していましたが、どれだけ仕事にのめり込んでも、バリューマネジメントの仲間は私を否定しませんでした。「働きすぎだよ」と切り捨てるのではなく、私の熱量を面白がり、支え、許容してくれた。その心地よい「空気感」が、私の仕事哲学の根底にある「楽しむ」という軸を育ててくれたのだと思います。
私のキャリアの決定的な転機は、2019年、神戸迎賓館のオーナーであった西尾さんとの出会いでした。お亡くなりになるわずか一週間前、二人でランチに行った際、私は西尾さんから通帳と鍵を託されました。「これ、お前に渡すわ」と。
地域のシンボルを守り抜こうと、人知れず葛藤し、戦い続けてきたオーナーの孤独と深い愛情。その想いを本当の意味で継承できる人間は、世の中にどれだけいるだろうか。そう自問した時、自分の中に確かな覚悟が芽生えました。単なるスタッフではなく、オーナー様の大切な人生そのものを引き受ける「チームの一員」でありたい。文化を紡ぐという言葉の本当の重さを、私は西尾さんの背中から学んだのです。
現在、私は拠点の総支配人として、メンバーの育成からステークホルダーとの関係構築、PL(損益)責任まで、拠点のすべてを掌握する役割を担っています。
日々、何より大切にしているのは「組織の空気感」です。
仕事は一生懸命やる。それは大前提です。その上で、事務所に笑い声があるか、些細な「嬉しいこと」を共有し合えているかを常に意識しています。風通しの良い現場では、「あ、あの件忘れてた!」「助かった、ありがとう!」という相互フォローが自然発生します。このポジティブな循環が、結果としてミスを防ぎ、組織の生産性を最大化させるのです。
宿泊部門のマネージャーや支配人として最も苦しいのは、チームが停滞し、進むべき未来が見えなくなった時です。私は誰かが苦しんでいるのを見過ごすのが大嫌いです。特に、どれだけ想いを込めても「数字(成果)」が伴わない時は、自分の無力さに打ちのめされます。
私は自他共に認める負けず嫌いです。Chief時代から、「会場の中で一番、状況を把握している人間になろう」と決めていました。オペレーションの細部から、パートナーであるクリエイターさんの想い、地域の課題まで、誰かに質問されて答えられない自分が許せなかった。
その徹底的な執着が、今の私の武器です。会場のすべてを知っているからこそ、メンバーに的確なパスを出し、困難を乗り越えるための解決策を提示できる。「松岡さんに聞けば大丈夫」という信頼こそが、今の私を輝かせています。
かつて愛媛の大洲で、10m先のゴミ出しすら一苦労されていた近所のおばあちゃんが、私たちが手がけた施設に灯りがともるのを見て「明るくなって、本当に嬉しい」と涙を浮かべて喜んでくださいました。その瞬間、自分がやっていることの正しさを確信しました。
京都という歴史の重積する場所で、法観寺や建仁寺といった素晴らしい寺社仏閣に囲まれて働く今、私たちのチャレンジはさらに高い次元へと向かっています。この歴史的な価値を、いかにして「地域の誇り」として守り、子供たちが憧れる場所として次世代へ繋いでいけるか。それは私にとって生涯をかけた挑戦です。
私は、最初から「やりたいこと」が明確である必要はないと思っています。私自身がそうだったように、目の前の仕事に一生懸命向き合う中で、自分らしさを見つけていけばいい。
「自分を広げていきたい」「誰かのために一生懸命働きたい」という純粋な想いを持つ方にとって、私たちは最高の伴走者でありたいと考えています。共に楽しみ、共に悩み、そして地域の未来を明るく照らす。そんな贅沢な挑戦を、ぜひこの場所で一緒に始めましょう。